第6回 いじめる側、いじめられる側
みなさん、いじめる側と いじめられる側、どっちが悪いと思いますか? 私は 『いじめられる側が悪い』 といつも言います。 もちろん、いじめる側も悪いです。 何故かと言いますと、いじめられている子に『いじめるほうが悪い』と言った場合、いじめられている子はどう思うでしょう? 『じゃあ自分は悪くない、いじめるあの子がいけないんだ。』 きっとそう思ってしまうでしょう。 事実そう言う子に自分に悪いところはないのかと聞くと『ない』と答えます。 果たして本当にそうなんでしょうか? 私はこれが、いじめの一番の問題点であると思っています。 転校してきた子がいじめられる。 これもよくある話です。 これは一種の 『縄張り争い』 に近いかと思います。 例えば自転車置き場で考えてみましょう。 マンションの自転車置き場にいつも自分が自転車を置いている場所があります。 いつもそこに置いています。 ある日いつも通り、自転車で出掛け帰って来ると、 いつも自分の自転車を置いている場所に他の自転車が置いてあります。 一度や二度は譲るでしょう。 しかし、あたかもそこが自分の自転車置き場だと言わんばかりに、毎日置かれたらどういう気持ちになるでしょう。 転校して来た子は自分が転校してくる以前の状態が分かりませんから、 それに近いことをしてしまっているのかもしれません。 職場でもよくあると思います。 『入ってきたばっかりのくせに』って。 いじめる側の子に何であの子をいじめるのかを聞くと大抵返って来るのが 『分かんないけど、何かアイツ見てるとむかつく』 こんな感じのことをいう子が多いです。 例えば遠くから『バーカ!』と言われた子がいます。 子供同士なら、よくある話です。 それに対するその子のリアクションが『何も言い返さない、何もしない』であったら、 『バーカ』と言ったほうの子はどうするでしょう? また同じことをするでしょう。 でも言われた子は何もできません。 今度は近くから『バーカ』と言ってみます。 でも言われた子は無視をするでもなく、何も出来ません。 こうやって、いじめる側は少しずつ入ってきます。 何もしないから相手は来るのであって、何かしていたら来ません。 そもそもで言えば、最初に『バーカ』と言うのも、言う相手を選んで言っているはずです。 つまり最初に言われる原因を作ったのも自分、言われても何もしない、出来ないからまたやられる。 つまり自分が悪い。 私はそう教えます。 だからまず、そういう事を言われない人間にならなきゃいかんという話をします。 いじめる子を直すのは簡単です。 それがいかに愚かな行為か、人間として恥ずべき行為かを教えてあげればいいだけの話です。 いじめるということが悪いことだと最初から知っているわけですから、10分話せば大体理解します。 一方いじめられる側の子はかなりの手間が掛かります。 自分は悪くない、悪いのはいじめるほうだと決め付けているので、そこから始まります。 自分が悪いという事を自覚しても、その子の根本は変わっていないですから、 そこから言われない人間になるための努力が始まります。 いじめをなくすには二つのことが必要です。 一つはいじめている子にそんなくだらないことを するなという話をします。 二つ目はいじめられている子に、まず自分が悪いという事を理解させます。 その後は稽古していけばいつの間にか いじめない、いじめられない子になっていきます。 正しい稽古をしっかりとしていけば正しい人間になります。 正しい人間はいじめることも、いじめられることはありません。 いじめる側だけ直しても解決にはなりません。 例えば学校のクラスでいじめがありました。 先生の熱心な教育によりいじめる子をいじめない子にしました。 これでそのクラスからは、いじめがなくなりました。 でもいじめられていた子は塾に行けば塾の生徒にいじめられるかもしれません。 習い事にいけばその教室でいじめられるかもしれません。 学年が変われば違ういじめっ子がクラスにいるかもしれません。 部活をやっても、高校に行っても、アルバイトをしても、社会人になっても一生いじめはなくなりません。 いじめられる側の子を直すのが根本だと思います。 誤解のないよう言っておきます。 当道場の稽古は殴りあいの組手稽古を一切しません。 物を叩く、蹴るという稽古もしません。 道場で組手をやらせてケンカに強くなったからいじめられませんというような低いレベルの話ではなく、 人格を作りあげることにより、『いじめられない』ではなく『いじめられている子を助ける』というレベルまで持っていきます。 ケンカに強いのといじめられるのは全くの別問題です。 すでに現役を引退していますが、日本国民全員が知っているような名力士も学生時代は体が大きく当時から有名ということもあり、 上級生に目を付けられいじめられていたそうです。 もちろんケンカをすれば絶対に負けません。 いじめの仕組みが分かっていない大人が本質を見ずに、うわべだけを見て、 いじめをなくそうと思っても難しいと思います。 いじめる人間をなくすのではなく、いじめられる人間をどうやっていじめられない人間にするか。 これが私の考えです。 どうやったらいじめられない人間になれるのか。 怒られながら稽古してくなかで、時間を掛けいつの間にかそういう人間になっています。 |